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恋愛体質の女は結婚できない?
26歳と33歳で二度の婚約破棄に至る理由は、結婚よりも恋愛をえらぶ女だから。アメリカ在住の私は34歳。24歳の今彼との恋愛を中心にアメリカ人の元婚約者に元彼を加えた三人の男性との恋愛事情
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彼女の恋愛模様と彼とのメールやりとり

2016年10月2日日曜日 メール 彼氏 彼女

私は男の人を積極的に追いかけたことがない。

追う必要がないほど自分がいつも追われていた、と言いたいのではない。

単なる私の性格で、相手のことを気遣ってしまうあまりに自分から誘ったり電話したりできないのだ。

これは男女に関係なくて、けっこう親しい友達でも、自分から「明日食事でもしましょうよ」と言うことなどはほとんどない。誘ってもらえるのはすごく嬉しいのだけど。電話ひとつかけるのも「今迷惑じゃないかしら」とすごく気になってしまって、相手が出ると一番最初に口にするのは「今、話してて大丈夫?」という言葉だ。相手が女友達でも、男の人でも、家族でも。

基本的に自分に自信がないのかもしれない。自分から誘って相手が内心気が進まないのに無理に来てくれるんだったらどうしよう、などと思ってしまうのだ。女友達に対してさえそうなのだから、一方的に気になっている相手の男性なんて、天地がひっくり返ったって自分から「今度お食事でもいかがですか」なんて言えないと思う。

追いかけたことがない、と言うと、「じゃあ元彼のことは?」って思われてしまうかもしれない。

確かに元彼のことは常に私の一方的な気持ちだった。
気持ちの上では、ときどき会う関係だった5年間の間、私が追いかけ続けたようなものだった。けれどその5年間、私は元彼にほとんど一度も、自分から電話をかけたことがない・・・

電話はかかってくるものだった。メールもそうだ。用事もないのに私からメールしたことはない。いつも彼からメールが来て、「今日会えない?」と聞かれた。

私はよく断った。ベストな状態で会いたかったから、少しでもその日の服装や肌の調子が気に入らなかったら、次の機会のために断るのだ。

「次の機会」は1ヵ月後になるか2ヵ月後になるかわからない。でも自分から「じゃあ来週の・・・日ならどう?」などと提案することはなかった。

すると元彼は「冷たいな」とか「なかなか会えないね、美樹はいつも忙しいけど、誰に会ってるの?」なんて形の上でだけすねたり、嫉妬する様子を見せた。

私と元彼の会話だけを第三者が聞いたら、元彼が私を追いかけていて私が冷たくあしらっているかのように見えたかもしれない。

けれど実際には私は、元彼のことだけで頭がいっぱいになって、いつも上の空で彼からの連絡を待って生きていた。連絡がない日が続くと生きていること自体がつらくなって、深夜まで声をあげて泣いたりしていた。

元彼は、私がそんな風に彼を思って苦しんでいたことなど知らないかもしれない。実際に彼に電話したり誘ったり「好きだ」と言ったり、という行動を示したことは一度もないのだから。

なぜそこまで積極的な意思表示や行動を恐れるかというと、私は追われる側の男の子の反応もまたよく知っているからだ。

商社OL時代。内部にいるとよくわからないのだが、「商社マン」という人種が特別に好きな女の子が世の中にはいるようで、私の同僚たちはよくもてていた。そこそこの外見があればあとは学歴も会社も文句なしということで、結婚につながる恋愛を求めている人にはいい狙いどころだったのかもしれない。

しかしそういうエサで女の子をおびき寄せて適当に楽しんでいる彼らを友達という立場から見ていると、人間不信に陥りそうになりながらもいろいろと学ぶ点が多かった。

彼女が3人いる男がいた。

その男と同じ方面に住んでいて、電車で一緒に帰宅した別の同僚によると、この男は、3人の彼女に次々と「今仕事終わったよ!」コールをするために、せっかく一緒に帰っているのにほとんど会話する時間はなかったそうだ。

しかし彼はそれぞれの彼女に対して本当に優しくまめな口調で話すので、となりで聞いていた同僚は、「あまりまめじゃない普通の男とつきあうより、3人の女の一人でもこいつとつきあったほうが幸せかもしれないな」と思ったという。

逆に言うと、そんなまめな性格だからこそ彼女が3人いる状態を維持できるのだろうけど。当時私たちは社会人2、3年目だった。そのころの商社マンというのは本命彼女一人とさえ、1ヶ月に1度くらいしかまともに会えないほど忙しかったりする。それを彼女3人なんて超人というか特殊才能だ。それも他の女たちの存在をまったく気付かせず完全に満足させている。あきれるのを通り越して尊敬してしまうような奴だった。そういえば彼女たちは3人とも年上だったそうだけど、その年上彼女たちは今頃どうなっているのだろう・・・


28歳のときにつきあった3つ年下の同じ会社の男の子。私とつきあうまではコンパの嵐、その気になれば平日月曜から金曜まで毎日行けるほど、誰かがどこかでコンパをやっているような環境だったようだ。

私とつきあう少し前に参加したコンパで彼は「お持ち帰り」した。そのときは確信犯で、仕事でちょっとストレスがたまってたので、コンパの前から周囲に「わりぃ、俺今日持ち帰るからさ、よろしく」と宣言していたそうだ。まわりも「おー、どうぞどうぞ」という反応。

トイレに立ったとき「この子いけそう」と思っていた女の子がちょうどすれちがいにトイレに入ろうとしていた。目があって、一瞬すれちがいかかってから、「ねえ」と話しかけて、ふりむいた彼女に何も言わずにキス。「全然抵抗しなかった、あ、やれると思った」とのこと。

そのあと周囲の微妙な協力もあって二人だけ別テーブルで話し込んだりして、「このあとどこか行こうよ」と誘い、二人だけになれる場所に・・・
さてその後のこと。

彼女はけっこう彼のことを気に入ったようで、何度か電話があったそうだ。そのたびに適当に相手して、「また会おうよ」って話になるとまた適当に「そうだねー、また」と言いつつかわしていた。けれど何かと電話は続いた。

私はこういう話を聞くと本当に不思議になる。

「その時点で、気付けよ!」って思う。私だったらそういう関係になったあと男のほうから連絡がなければもう一切自分から何もしない。それ以前にコンパの帰りにホテルには行かないけど。

百歩譲って彼女と同じ状況になったとして、「また会おうよ」を適当にかわされたら、その時点で忘れる。忘れる努力をする。そういう対応をされてどうしてプライドが傷つかないのだろう。どうしてそれ以上何かを期待して連絡し続けたりできるんだろうか。

やがて電話での彼女の声は少しずつ思いつめたものになり、それでも放置していたら、一時期連絡が途絶えたそうだ。

忘れた頃、またかかってきた。今度は「はっきりさせよう」と決意したらしく、「つきあえないの?」という単刀直入な質問だった。
彼は「今、彼女とかいらないんだよね、仕事いそがしいし」と答えた。
彼女はそれであきらめたらしい。

しかしおそらく「自分の気持ちをふっきるために」もう一度、「最後の電話」っぽいのがかかってきた。

真夜中の2時。

半分眠ってる状態で彼が対応すると、震える声で「・・・ありがとう、ってお礼だけ言いたくて。私にとってすごく楽しい夜だった。ありがとう・・・」そう言って電話を切ったそうだ。

彼は「あー・・・はい、わざわざどうも・・・」と答え、次の瞬間また爆睡へ戻る。

こんな話を、彼は私と手をつないで歩きながら淡々としてくれた。忘れてたけどそういえば、というノリで、ときどき記憶違いがあって、「あー違った違った、それは別の女だ」とかつぶやきつつ。

「今、彼女はいらない」と言った彼は、その直後に私に出会ってつきあいはじめた。会社のエントランスですれ違った私を、彼はUターンして追いかけてきたのだ。私は帰宅するところだった。

私は定期で改札を通って地下鉄のホームに降りたのに、彼はあきらめず切符を買って階段を駆け下りて私に追いついた。

電車が入ってきて、彼は私を止めようと必死で腕をつかんだ。まったく、すれ違ったときに私も目があってちょっと「いいな」と思っていなかったら、犯罪者か何かかと間違えて大声をあげるところだった。

「ねえ、さっきすれ違ったでしょ。**社の人だよね。俺3年目なんだけど。・・・電話番号教えて」、ほんと、直球ストレートな声の掛け方だった。

思わずおかしくて笑ってしまったけど、私はすれ違ったことを覚えていることは隠して言わなかった。

男は、この女、と確信すれば息を切らして走ってでも追いかけるし、そうじゃなければ一回ラブホテルに行ったあと何度連絡があっても会おうという気にはならない、行動も起こさない。

それに「今、彼女はいらない」なんてその場をかわすための適当ないいわけだ。遠まわしに傷つけないように断るときの常套句。でもそんなことも相手の彼女にはわかっていないのだろうと思う。

彼女にとっては悩んだ挙句の、自分にふんぎりをつけるための、重要な電話。彼にとってはほかの記憶にまぎれてどうでもよくなっているようなこと。ほかの女と混同してしまうレベルの。深夜の電話で「ありがとう」と言ったことは、彼女にとってのひとつのドラマのクライマックス。彼にとっては半分眠っている間にかかってきたよくわからない電話のひとつ。

彼にとっては簡単な気晴らしの「お持ち帰り」。彼女にとってはひとつの出会いから別れまでの重要な出来事。彼が「お、やれる」と思ったキスも、彼女にとってはロマンチックな思い出・・・

こういう風に、追う側と追われる側にはどうしようもない温度差がある。追う側には残酷だけど、追われる側には笑えるほど何もかも明瞭に見えてしまう。

私は温度差を冷笑されるような立場になるのが何よりも嫌なのだ。

自分の必死な思いも考えた末の行動も、彼が私にしたように、本命彼女との笑い話のネタになって忘れられる。一歩下がって自分を冷静に見れば、それくらい容易に想像できる状況ではないだろうか?

私と違う意見を持つ人にはなぜそこまでネガティブに考えるの?と思われるかもしれないけど、私は連絡がない男はイコールこちらに興味のない男とみなす。それを追って追ってこちらを向かせてつきあうという展開を私は信じない。かりに一時的にそのとおりになってつきあいだしたとしても、常に自分に弱みがあるようで私だったら耐えられないと思う。私はいつでも、男の側が「俺が追いまくって勝ちとったんだ」と周囲に誇るような存在でいたいのだ。

あるとき、うまくいきかけたと思ったら相手から連絡がなくなってしまった、というような状況で、こちらから連絡したい、という誘惑に打ち勝つために、自宅に携帯を置いてホテルに一人で宿泊したことさえある私だ。一人暮らしのマンションに家賃を払ってるというのに、わざわざ平日にホテルに一人宿泊・・・。2万円かけても自分から連絡してしまうことを防ぎたかった。

帰宅したら連絡を待って過ごしてしまいそうなので、クタクタになって何も考えず眠れるようにジムで2時間もマシンを使ってエクササイズして、降りた瞬間に倒れたこともある。

貧血で倒れても、私にとっては「自分から連絡する女」「冷たくされても追いかける女」になるよりはるかにマシだったのだ。

そうやって歯をくいしばって電話をかけなかった相手の彼とは、結局そのまま自然消滅した。ここで「自分から連絡していたらうまくいってたんじゃない?」とは私は決して考えない。ああ、よかった。やっぱりだめになる関係だったんだ、自分から電話してみじめな気持ちになるより、せめて、お互いに連絡がなくなって終わったんだと思えて本当によかった、と思った。

ちなみにこの出来事は私が日本の会社を辞める約1年前のことだったのだが、渡米して世界が変わってそんな記憶はすっかり薄れていたころ、意外な形で私は彼を思い出すことになった。

それは職場の先輩からの久しぶりのメールがきっかけだった・・・けっこう上の先輩で、私がその職場にいたころすでに40代だったと思う。若かった頃はどんなにきれいでもてただろう、と思える美しい人で、スタイルも完璧で、私の憧れの女性だった。この先輩に私は何かと恋愛相談をしていた。

メールの内容は、例の彼のことだった・・・私がホテル外泊してまで連絡せずに頑張った、うまくいかなかった男の子。

「先日**くんと話したとき、美樹ちゃんを泣かせちゃだめよ!って言っておきました。**くん、かなりびっくりしてました」

という箇所を読んで私は絶句した。

先輩!!!やめてよー!!心の中で絶叫してしまった。

大金を払ってまで、貧血で倒れてまで私が連絡せずに頑張ったあの努力はなんだったのか・・・

そのときになって私は思い出した、恋愛がうまくいかなくてつらくてロッカールームで泣いていたら、この先輩が偶然入ってきた。私は個人名は出さず、ただ「うまくいかないんです、同じフロアにいる人だから、見るたびにつらくて」と言いながら泣いた。

先輩は多くは聞かないまま、気晴らしに私を遊びに連れ出してくれた。遅くまで遊んで、最後は先輩の自宅に泊めてくれさえした。あのとき、センスのいい彼女の部屋のインテリアとか、スーツから軽装に着替えたときの40代とは絶対思えないスタイルのいい足のラインを見て、さらに憧れがつのったのを覚えている。

でもこのメールを見たときはそんな長い間の憧れも一気にふっとぶほど動揺してしまった。なんてことしてくれたんですか先輩!と私はメールの画面に向かって叫びたかった。

だって、先輩の「美樹ちゃんを泣かせちゃだめよ」の一言は、私の努力を無にするだけではなくて、大いなる誤解に基づいていたからだ。

私がロッカールームで泣いていたのは彼のせいではない。10年前からの呪いの恋愛、元彼のことで泣いていたのだ。元彼も、この彼も、確かに同じフロアだった。元彼よりもわかりやすくかっこいいタイプの彼のほうを、先輩は自動的に私の涙の原因だと考えてしまったのだ。

私はかなり迷った。

あのとき必死で連絡を我慢した彼にいまさらのようにメールして、「先輩にこのようなメールをもらったけど、それは誤解なんです。**くんのせいじゃないんです」と誤解を解いておこうかとも考えた。

けれど、それは私があれほどまで避けようとした、まさに「自分から連絡をとる」行為ではないか。

本当にどうでもよければ、こんな一件もほっといて忘れるべきなのではないだろうか。
かなり葛藤した。結果・・・やっぱり私はメールもなにもしなかった。

今ではそれが正解だったな、と思う。この出来事の少し後、彼が職場の誰かと結婚したというニュースを聞いたからだ。先輩からのメールがあったころはちょうど婚約して結婚準備に忙しい時期だっただろう・・・そんなときに何年もまえ、一瞬だけつきあいかけた相手である私のことなんて、本当に彼にとってこそ「どうでもいい」記憶だっただろうから。  
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