タバコを吸う彼氏が嫌いである理由
アメリカの幼稚園ではよく「I love my mom because...(お母さんのことが好きな理由は・・・)」という書き出しで子供たちにたくさん「・・・だから」というリストを作らせたりする。口で言わせて書くのは先生なのだが、「ピーナッツバターサンドイッチを作ってくれるから」とか、「運転するとき僕と妹のことをプレシャス・カーゴ(特別な高価な貨物)と言うから」とか、なんとも可愛い理由が並ぶ。ときに「お母さんは可愛いから(Because she is pretty)」とか、子供なりの愛情表現があっておもしろい。
そこで私もそんな慣習にならってみる。
「彼氏くんのこと大好きな理由」
・手と指の動きが好きだから。・・・っていきなり下ネタじゃない。本当に手の仕草が好き。助手席にいるとき「太陽がまぶしい」と言ったら隣から手をのばしてサンバイザーを下ろしてくれた。そのときまだつきあっていなかったけど、その仕草だけでかなり好きになってしまった。優しくて少し遠慮がちで、でも指が長くて大きい、男らしい手。
・タバコを吸わないところ。・・・私はタバコが本当にきらい。アメリカ、特にカリフォルニアは禁煙が徹底していて、建物の中は一切禁止。これに慣れてしまうと久しぶりに帰国した日本で食事中となりの席から煙が流れて来たりすると、ありえない!!って思ってしまう。これだけで日本に帰りたくない、アメリカに永住したい理由になりえるほど嫌い。だからタバコを吸う人とはつきあえない、ましてや結婚できない。止められない、という人には意志の弱さを感じるし、タバコの害を無視する人には知性の低さを感じるから恋に落ちることもない。・・・ひとつオチがある・・・忘れられない過去の男、元彼はスモーカーだった。元彼のタバコの煙だけは不思議にいい匂いに感じてしまったものだった。恋愛って不可解。
・一緒に結婚式の披露宴に出たとき、私は訪問着を着た。和服なんて滅多に着ないのですっかり疲れてしまって、ホテルの部屋に戻った瞬間に帯から何から次々とむしるようにして脱ぎ捨てて、あとも見ずにシャワーを浴びにバスルームへ。床に散らばった和服一式はとりあえずシャワーのあと適当にたためばいいやと思っていた。
戻ってくると・・・ベッドの上に、すべてがきちんとたたんで積み上げられていた。「折り目のとおりたたんでみたよ。けっこう簡単だったよ」とその隣に座った彼氏が笑顔で私を見上げた。
このときはほんと、出会いの神様に感謝したくなるほど感激した・・・「神様ありがとう、私に彼氏を与えてくれて・・・」
・焼きもちを焼くんだけど女性側に責任転嫁しないこと・・・これは私は重要な男性の資質だと思う。嫉妬深い男、束縛する男とは以前にもつきあったことがある。一番最悪だった男は常にメールと携帯で私の居場所を確認しないと気が済まなくて、でも最初はそれを愛情の強さのように感じて私も楽しんでいた部分があった。その男の最悪だったところは、連絡がとれないと心配するというより「連絡がとれないような女」と言って私を責めること、怒りをぶつけてくること。他の男に声をかけられたりするとその男じゃなくて「おまえに隙があるから」と私を悪者にするところ。
そこまで極端じゃなくても、一般的に男の人は嫉妬するとプライドのせいなのか縄張り意識のせいなのか嫉妬の対象の同性よりも女性のほうを責める傾向があると本でも読んだ。
でも私の彼氏くんは別。
焼きもちやきなのは間違いなく、あるときなど私がカルヴァン・クラインの下着の男性モデルを見て「うーん、この腹筋すごいな」と何気なく口にしただけで泣きそうになるほど心配した。「こんな腹筋じゃないとだめ?美樹ちゃん、僕じゃだめ?・・・これから鍛えるね。目標は夏までに、こんなふうに腹が割れるくらいになるからね。」と言いながら悔しそうにモデルの写真を見つめる。・・・いや、私は自分がキックボクシングで筋肉づくりを目指してるので、あくまで筋肉がうらやましくて「すごいな」と言ったんだけど。
でも彼氏の焼きもちの焼き方は可愛い。
私に嫌な感じを与えることなく、いつも「こんな嫉妬しちゃう自分が嫌だよ」とか「自信持てるように、美樹ちゃんに愛されるようにもっと頑張るね」とか、自分にその原因を求めたり前向きに考え直す姿勢がある。これは男性として希有なことではないかと私は考えているのだ。もしかして私だけが今まで出会ってなかっただけで普通のことかもしれないけど。
・いつも手をつなぎたがるところ・・・私個人的に、手をつなぐ人が好き。小さなことだけど、一緒に歩いているとき手が触れあっているのは幸せなことだと思う。大きな失恋をしてしばらく恋人がいない時期など、「彼氏が欲しいな」というより「誰かと手をつないで歩きたいな」ってよく思った。彼氏は私よりも「手をつなぎたい」レベルが1段階くらい上で、それがちょうどいい。先に手を離されてしまったら寂しいから。いつも私が先に手を離して、彼氏は慌ててまたつかまえにくる。それくらいが幸せ。
・アレルギーとか一切なくて健康なところ。・・・私自身がアレルギー系の不調に悩まされてきたのでそういうのに縁がない人に惹かれる。もしかして遺伝子の要求なのか?
・海が好きで夏は毎週サーフィンしにいくところ・・・男の子はそうじゃなくちゃ!
・運動神経抜群なところ・・・私自身がそうでないので、スポーツ得意なだけで惹かれてしまう・・・これも遺伝子か?
・話しているときにちょっと考えて言葉を選ぶ瞬間、息を吸い込む音がわずかに聞こえる。その音の感じとか、息を吸い込む間とかがとても好き。私にとって「好ましい」という感じ。不思議なものだけど、恋ってそういうものじゃないだろうか。他の人にとってはどうでもよくて気づきもしないことが私にとってどうしようもなく「好ましい」。電話をしていて彼氏がそうやって息を吸い込むたびに、私は、なんども何度も恋に落ちなおしてしまうのだ。
・目・・・アーモンドのような形のきれいな瞳、長いまつげ、笑うと優しさにあふれた表情になるのに真面目な顔をしているとちょっとクールな若者って感じで近付きがたい。そのギャップがいい。
・肩と胸・・・一晩枕にして寝ていても自然な感じで肩が凝ったりしない。普通男の人は一晩中ずっと腕枕するなんていやがるし出来ないと思うけど、彼氏はそれが苦にならないらしい。私のほうも、微妙に腕とか肩の厚みでこちらの肩のほうが凝ってきてしまう相手もいるんだけど、彼氏はちょうどよくて、私専用、特製枕って感じだ。
・小さいとき捨て犬が可愛そうで拾って来てしまって育てた、いつも一緒でとても長生きした。子犬を抱きしめている子供の彼氏を見ると、本当に優しい子なんだなあという感じが伝わってくる。
「もと婚約者、元婚約者を好きだった理由」
・私は元婚約者の口元が好きだった。歯並びがとても良かったのだ。これはアメリカの矯正技術の賜物であって、本来の歯並びではなかったけど。話す口元を見てるだけで嬉しかった。
・とても知的で話題が豊富だったこと。何を話していてもいつも尊敬することができた。
・アレルギーが一切なくて、虫歯も一本もなかったこと・・・なんだか生物として優秀という気がして好きだった。
・整理整頓が上手でいつも家のなかがきちんとかたづいていたこと
・小さいとき草原で死にかけていた子猫を拾って来て、お風呂にいれて、ミルクを飲ませて、命を救った。ずっとかわいがっていた。猫が大好きでふてぶてしい野良猫を見ても「可愛い」と言う。日本語で「さん」をつけるのが丁寧だと思ってるので野良猫にも「ねこさん」と言っていた。こんなところで本質的に優しい人なんだな、というのがわかって好きだった。
- - - - - - - - - -
こうしてリストにしてみたら案外と共通点もあった、彼氏と元婚約者だった。
ただ彼氏くんのほうはほっとけば延々と続いてしまうほど思い付いてしまうのに、元婚約者についてはあまり次々と浮かんでこないのと、やっぱり外見的なこととか仕草とかを愛しい、恋しいと思ったことがないのに気づく。今現在恋していないせいもあるかもしれないけど・・・
心と体が惹かれる相手と、理屈や社会的条件で完璧な相手とが、いつになっても一致しない。私の場合そこが致命的でいつまでも結婚できないでいるのだ。ああ、なんでうまくいかないんだろう。世の中の人々はそのへんがカチッと合わさってぴったりマッチして結婚していくのだろうか。本当になんでみんな簡単に結婚していくのかなあ。
スポンサーリンク
スポンサーリンク