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恋愛体質の女は結婚できない?
26歳と33歳で二度の婚約破棄に至る理由は、結婚よりも恋愛をえらぶ女だから。アメリカ在住の私は34歳。24歳の今彼との恋愛を中心にアメリカ人の元婚約者に元彼を加えた三人の男性との恋愛事情
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元彼との甘く激しい秋の恋模様

2016年9月22日木曜日 元彼 恋愛

秋になるといつも、実家を出て一人暮らしをはじめた26歳の頃のことを思い出す。
私の引越しを手伝ってくれたのは元彼だった。

実家の玄関の前で、買ったばかりの黒いBMWのドアとトランクを開け放って元彼が待っていた光景を覚えている。私のCDとかランドリーバスケットを受け取ってトランクにいれる元彼。もういい?これで全部?と確認して、ドアを閉めて、秋の空気の中へ車を発進させる。

隅田川にかかる大きな橋をわたる・・・週末なので人が少なく、道もすいていて、とても解放感があった・・・隅田川の川面が光を反射してきらきらとまぶしく、あちこちに屋形船がのんびりとうかんでいる。そんな川の風景もほんの一瞬、目をかすめただけで、元彼はかなり速いスピードで車を飛ばし、オフィス街をつっきっていった。

四季がないといわれる東京だけど、住んでいる私たちに言わせれば決してそんなことはない。秋には夏の暑さに幕を下ろしたしとやかな風がヒンヤリと流れ歩き、空はけだるさの消えたシャンとした青に染まる。

その感じは永代通りが皇居にぶつかるあたり、深い森の色をした内堀とそれに沿って続く並木で、とくに鮮やかな景色になって目の前に広がる・・・葉が落ちる準備を始めた並木通りに、再び舞い戻ろうとする冬将軍の気配がチラリホラリ……。

秋の青空に照らされれれば、これこそまさに日本の雅という趣で、その日、幸運にも観光に来ていた白人のグループがこの国の〝わびさび〟に情緒深く心を打たれていた。

お堀の水に、白い道路に・・・目にうつる光景のすべてに、秋の日差しが満ちていた。私と元彼の乗るBMWも皇居を右手に見ながら走り抜けていく。日比谷、そのむこうに銀座、こんな日は街の高い建物に降り注ぐ光も優しい。皇居を時計回りに回って、六本木通りから三宿のほうへ向かった。

秋の色に映える恋人達。そんな言葉がぴったりの二人の週末だった。


この日の光景を特別に幸せな秋の日として覚えているのは、それが私と元彼がまるで恋人同士のようにしてすごした数少ない機会のうちのひとつだったからだ。

いろいろな偶然が重なって、この日はそういう幸せな日になった。日差しがクールな秋の日であったことも、元彼の気分に影響したかもしれない。一番大きな要因は、元彼が3年くらいつきあっていた彼女とその少し前に別れたことだった。

元彼と知り合って2年がたっていた。元彼には私と会うようになる前からステディな彼女がいた。私にも20歳近く年上の恋人がいた。お互いに恋人を持ちながら、何の約束もない、でも一緒にいる間はとても親密な関係になる、そんな相手は決して元彼が初めてではなかった。恋愛体質な私はいつでも、優しい彼氏と一時的な相手と、同時に二人から愛される自分を楽しむことができた。元彼とのこともそうやって楽しんでいられれば、これ以上の相手はいないというほど、お互いにいいパートナーになれたはずなのだ。

ただ24歳の私に起こった悲劇は、私が一方的に元彼を本気で、とても、とても好きになってしまったことだった。そして元彼にとって私は遊び相手に過ぎなかったということ。

僕は美樹中毒になったよ。もう離れられないね。そんな言葉を元彼が私にささやくのは、常にセクシュアルな意味合いにおいてだった。将来や日常を共有したいという意思表示はきれいに排除されているのだった。

それを愛情だと勘違いするほど、さすがに私は純粋ではなかったけれども、それにしても24歳という年齢はまだ、冷静に自分の状況を把握するには若すぎた・・・あるいは今でもわからない・・・恋愛体質。体が惹かれあうということと、そのことに信頼や永遠に続く感情が決してともなわないということを、私は今でもうまく自分の中で整理することができない。

とにかく、気がついたときは遅かったのだ。私は元彼の仕草ひとつひとつ、その視線をふと移動させるときの瞳の動きから、ラップトップに向かってキーボードを打つときのちょっとした手首の角度まで・・・好きで好きで、いとおしくてたまらなくなっていた・・・何の危機感もなく、ただ、好き!という強い感情に身を任せていた。そのときはもう、私と元彼の気持ちは全然違う方向にすれ違っていってしまっていた。元彼は彼女と別れる気なんてサラサラなかった、その必要性も感じていなかった。

そうやってどこまでも遠くすれ違いながら、何年も時間が過ぎた。最後に顔を見て話をした29歳のときまで、5年間、私の気持ちの強さは一度も変わらず、ただ傷だけが深くなっていった、とりかえしがつかないほどに、その後普通の状態に戻るのに何年も必要としたほどに。

同じ5年間が、元彼にとっては、私をとても気に入っていた状態から徐々にどうでもよくなっていく過程に過ぎなかったのだろうけれど。

それでもその5年間のうちにほんの数日、私と元彼が普通の恋人同士のように、ベッド以外の場所で過ごした日々があったのだ。暗い雲がふと途切れて日が差すように、私にとってそれは思いがけなく訪れる幸福だった。
引越しの日は、そんな貴重な時間のひとつだったのだ。

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車の荷物を入居するマンションの部屋に運び込むと、私たちはランチと買出しのためにまた車に乗り込んで渋谷に向かった。

交差点の人ごみの中を歩くとき、元彼が私の肩を抱く。さりげなく背中を伸ばして歩きながら、私は指先が震えてきそうなほど嬉しかった。こんなことはもうこの先二度とないかもしれないけど、それでも別にかまわなかった。大勢の人たちの中を、元彼と並んで歩く、肩を抱かれている、この感触を、この春の日の空気を、ずっとずっと覚えていようと思った。

無印良品でカトラリーをそろえたり、一人暮らし歴は先輩だった元彼が私のために細々とした雑貨、サランラップとか洗濯バサミとかを選んでくれたり、私は何をしていても楽しかった。明るい日差しの中で元彼を見て、会社の同僚の噂話なんかを何気なくする、普通のカップルが何の感慨もなく日々繰り返すだろうそういう小さな事々を、私はひとつひとついとおしく思った。

元彼が窓にカーテンをとりつけてくれた。この部屋に入りびたりになるかも、と彼は言った。彼もまた、恋愛体質だった。

キッチン用具をシンクの台に並べる前に、と言って私を台に乗せて服を脱がせだしたり、ベッドの位置を決めてから「まずは寝心地を試そうよ」と言い出してまた押し倒されたり、引越しの作業は何度も中断した。まるで二人で暮らし始めるかのように、まるで付き合いだしたばかりのカップルのように、元彼は優しくて私を一日離そうとしなくて、二人きりの時間は甘さに満ちていた。一段落したころ、素晴らしかった春の一日が終わって空が暗くなり、けれど、元彼は夕食までは滞在せずに帰っていった。

この部屋で暮らし始めてからしばらくして、私は近所の小さなオーガニック食品店でおいしいアーモンドバニラのグラノーラを見つけた。元彼が泊まっていったときの朝食用にと、私はそのパッケージをしばらくの間欠かさずに買い足していた。

けれど元彼からはそのまましばらく連絡がなかった。

半年くらいたったころ、さすがにもう元彼がそれを朝食に食べることはないだろうとわかっていたのに、私はまた習慣でアーモンドバニラ・グラノーラをひとつ余分に買ってしまった。帰り道、自分で自分がおかしくなって声を出して笑った。それから涙があふれた。もう2度と会えないかもしれない、半分覚悟はできていたその思いつきに少しでも感情を許しそうになると、恐くて恐くて立ち止まることすらできない。グラノーラの入った紙袋を抱えて歩きながら、長いこと涙がとまらなかった。

元彼はこの部屋に入りびたりになどならなかった。

1年が過ぎた頃、一度だけ、何かのついでに元彼が突然私の部屋に立ち寄ったことがあった。あきらめていた元彼の突然の訪問が私は嬉しくて、素顔に部屋着という姿でドアを開けてしまった。話という話もせず、何もしないうちに、誰かから(新しい彼女からとわかっていたけど)電話がかかり、元彼は慌ても悪びれもせず、「じゃあね」と笑って帰っていった。そのあと私とは一度も会わなくなるのに、元彼もそのつもりだっただろうに、お別れはそんな軽い一言だった。

それでも私は元彼を容易に忘れることができない。毎日、毎日、オフィスで顔を見るからだ。決して目が合うこともなく、言葉を交わすこともないのに、元彼は目の前でほかの人と話したり笑ったりしている。いつ見てもいかにも上質の生地でできたスーツを着て、流暢な英語で海外のクライアントと商談を進め、夜になると時計を見て立ち上がる、彼は変わらずゴージャスな男の子だった。私はそんな彼への執着から逃れられない。どうしても、何をしていても、誰といても、夜遊びしても、お酒を飲んでも、薬を飲んでも。

引っ越してから2年後、渡米のためにマンションをひきあげ、最後の最後にカーテンを外した。

半分くらいまで外したとき唐突に悲しさがこみあげてきて、私はカーテンレールから垂れ下がるグレーの布に顔を押しつけて号泣した。この2年の間、ときには一人で、ときにはそれなりに好きになってつきあう男の子が傍らに眠っていても、私は何度こうやって泣いたかわからない。元彼から連絡が途絶えてからは泣かない日のほうが少なかったと思う。

カーテンをとりつけてくれる元彼の後姿を眺めていた日のことを思い出す。ちょうど彼が立っていたあたりに膝をついて、半分露出した窓からさしこむ光の中で、私は泣いている。

季節はまた秋になっていた。


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それにしても少し不思議だ。

そういえばあの楽しかった引越しの日のあと、つらいだけのような日々が2年間も続いたということを書き始めてから改めて思い出した。それまでは忘れかけていた。また季節が秋になって、ヒンヤリとした秋風の中を歩いていたら、元彼のことで私が思い出すのは楽しかったことばかりだったのだ。
あの渋谷の街を元彼と二人で歩いたときの気持ち。

時間をたくさん重ねて、そうやって思い出は洗い流されていくのだろうか。つらい記憶はうすれて、幸せだけが残るのだろうか。あんなに泣いて、泣いて、一生分の涙を使い果たしたかと思ったような日々だったのに・・・それともこれもやっぱり、秋の魔法なのかな……
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