年下彼氏とのベッドでの相性
もし、年下彼氏のことを本当に体だけが目当てなんだとしたら、私は「若い男の体に目がくらんで、結婚目の前にして婚約破棄した」相当お馬鹿な女ってことになってしまう。それ、まさに…恋愛体質で結婚できない女だ。が……完全否定もできないかも。
婚約破棄を決意した当時のことを今思い出すと、私は「婚約者じゃなくて、彼氏と一緒に人生を歩もう」などと考えていたのではなかった。どちらかというと、目の前のごちそうをどうしても食べたいという欲望に打ち勝てなくて、一生モノの結婚を手放してしまったという感じだ。恋愛体質だから結婚できないのはここのところにあるのだろう。
それも破棄したのはどうでもいいような結婚じゃなくて、婚約したあと毎日我が身のラッキーさをかみしめた、完璧なサクセス・マリッジ。
そこまでして選んだということは、相当、体の相性が良かったのか?というと・・・
そうだ、私と彼氏は、お互いの体が好きで、好きで、もう一瞬も離れていたくない、という状態だ、少なくとも今のところは。それを相性というならまさに、抜群の相性なのだと思う。
ただ、私は「相性」が最初から決まっているものだとは思わない。一番最初のときからこういう状態だったわけではないし、彼氏が特別上手だとか、体質が合うとかではない。
なにしろ24歳の彼氏と34歳の私の間には、実に10年以上の恋愛経験値のギャップがあるわけで、当然ながら彼氏は初めてのときにぎこちなくて自信なさそうだった。
「俺はこんなに年上の女性を満足させられるのか?」と、とても不安だったそうだ。
だから、「相性が抜群」と言っても、「抱き合った瞬間からあっというまに彼氏の体におぼれていった」なーんていう映画のような話では全然ない。
「相性」の正体は、お互いへの気持ち。お互いが好きなら抱き合うだけで十分気持ちいいの。それに、相性は時間をかけて育てるもの。お互いにどうしたいか希望を上手に伝え合って、気持ちよさを追求していけばいいの。
そんな話を、初めてのときに臨むベッドの上で彼氏にした。お姉さんらしく、教えてあげるモードで。従順にうなずく彼氏くん。これだけ年が離れると、役割分担がはっきりしていていいなあ、なんか全然恥ずかしくなく「こうして」「ああして」って言えてしまうし、彼氏くんも常に努力を惜しまない良い生徒だ。これも相性のうちかもしれない、と思った。
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大人の男女関係そのものではなくて、その3歩くらい手前まで、という状態が、何ヶ月も続いていた。
1歩手前じゃなくて3歩手前。具体的には、どちらも服を脱がずに、でもベッドの上に横になっている。ひじをついておしゃべりしたり、抱き合ったり、冗談を言って笑ったり、でもふときづくと彼氏くんが私の唇以外の場所にもキスしはじめてしまう。
ダメダメ、何もしないって言ったじゃない。そう言うとすぐ、素直に体を離して「ゴメン」と言ってうつぶせになる彼氏だった。かなり残酷なことをしているとわかってはいたんだけど、私が嫌がるようなことは絶対しないと知っていたので、よくそうやって長々と彼氏をじらせていた。
「うーん、暴走寸前」とか、「あー、おかしくなりそうだ」とかつぶやく彼氏を見ているのが好きだった。こういうのってエッチそのものより楽しい。もちろん、いずれはそこに到達するとわかっていることが前提の、楽しみだけど。
さんざんそんな時期を楽しんだあと、「今日は、ついに」という夜がやってきた。私も彼もわかっていた。
私が婚約を正式に解消したあとの週末、今日は泊まっていくね、と最初から言っておいた日の夜だ。これだけ待たせたんだから盛り上がらないわけがない。そう思って私も楽しみだったのだ。
いつものように、夕食のあと、かたづけをしながらお茶をいれて、カウチでゆっくりおしゃべりして・・・そのうち、マグカップをふたりともコーヒーテーブルの上に置いて、お茶が冷めるのもかまわず・・・逆にヒートアップしていくのは私たちのほうで、やがて「ベッドに移動」のタイミングがやってくる。
彼氏くんはついに暴走しちゃうのかな?と様子を見ていたら、なんとなく、普段とちがって勢いがないのだ。もうおしゃべりはいいからさー・・・という気分の私と違って、彼氏はまるでパジャマパーティのような可愛い雰囲気でひたすらしゃべっている。
ついに、「どうしたの?」なんて聞いてしまう私。
すると彼は「勇気がない」なんて言い出す。何?どういう意味?問い詰めていると、唐突にカミングアウトした。
「あんまり上手じゃないよ。」
その素直な表情と、ちょっとしょんぼりしたような言い方に、おなじみの「なんて可愛いの!!」的反応が私の中で最高潮に達してしまった。
それから最初に書いた私の自論が展開された。あのね、彼氏くん。こういうのに上手、下手、なんてないの。好きならこうやって抱き合ってるだけで気持ちいいでしょ。したくないなら今は何もしないでただこうやっていて。キスして。
…と、そうこうするうちに、私に従順に従う彼氏くんは立派に役目を果たして、二人とも大満足の夜が更けていった・・・
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翌日、ベッドの上で正座して「ありがとう」という私の可愛い彼氏くん。いままでずっと自信がなかったけど、美樹ちゃんが不安を払拭してくれたんだ。過去につきあった彼女とは、なんだか一方的にしてるだけって感じで嫌だった。俺ってだめなんだな、ってずっと思ってた・・・
涙がにじみそうな表情で切々とそんな過去を語りだす彼氏くんに、思わず私は力説してしまった。
「信じられない。彼氏くんが服をぬいでそうやってベッドに横になるのを見てるだけで、女子はみんな夢中になっちゃうはずよ!」(←本音)
「そんなことなかったよ・・・。はっきり、下手ね、って言われたことあるもん」
絶句する私。世の中には男子に向かって「下手ね」って宣告する女子がいるんだ?私、内心そうハッキリ思ったことはあっても、口に出して言おうとは絶対に思わなかったなあ。
それから彼氏からいろいろと事情を聞きだした。
今まで、一方的にしてるだけって感じで楽しめなかった、満足させられなかった女の子の話。もと彼女で、3年くらい付き合っている間、後半はとくに、ほとんどレスカップル状態だったそうだ。
うーん、またしても信じられない。彼氏と彼氏、彼女の関係でいて、二人きりでいて、何故、何もしないでいられる?私だったら自分から襲う。
何歳のときにつきあってた彼女?と私は確認する。「俺が20歳のとき、彼女が23歳でつきあいはじめた・・・」
無言で微笑む私。
心の中は、高笑い。
ふふふ、小娘にはわからないだろうなあ、彼氏くんの楽しみ方が。まさに、「宝の持ち腐れ」ってやつね・・・キャリアが違うのよ、キャリアが!
納得合点して心がすっきり晴れて、私はまたあらためて彼氏が可愛くなって抱きしめる。
この年齢差で、この「キャリア差」で出会えてよかったなあ、私たち、ある意味とっても幸せな出会い方をしたんだなあと思う。
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こうして私たちは最初から大変なポテンシャルがあった「相性」をじっくりと時間をかけて育て始めた。
そして今まさに、まだ新鮮さを保ちながら(遠距離のおかげで)、かつ、いい感じに育ってきた相性を存分に楽しめる、プライム・タイムに差し掛かっているというわけだ。
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