結婚できない女は全てを捨てて東京に帰る
結婚できない女は、東京に帰ることにした……。――この週末、移民手続き関係の書類を全部まとめて捨てた。
アメリカにいる外国人にとって、「縁の切れ目がアメリカとの切れ目」になってしまうことは非常に多い。
恋人がアメリカ人であれば、「結婚する」=「グリーンカード入手」、「別れる」=「ビザが切れて帰国」という分かれ道がどこかでやってくる可能性が高いわけだ。
アメリカ人の元婚約者と結婚しないことに決めた私の場合も、婚姻ベースのグリーンカード入手の道はとざされた。いろいろと非常に面倒な移民手続きのために、婚約直後から集めていた資料、全部で厚さ3センチくらいになってたんだけど、この週末の大掃除(彼氏くん受け入れ準備の一環として!)で、思いきってまとめて全部捨てた。
なんとなく・・・元婚約者と最終的に別れてからも、その資料を捨てそびれていたんだけど。でもまあ、全部インターネットで集めた資料だしね。もし今後、万が一またアメリカ人と結婚するような運命が待っているようだったら、そのときまた集めるからいいのだ、だいたい移民法はクルクル変わるから今年の情報を保存していたって意味がない。
ちなみに、私の労働ビザはあと4年有効だから、いようと思えばまだアメリカにいられるし、その間に労働ベースのグリーンカードを申請するという選択肢もまだ残っている。
でも、結婚できない女…私はもう、自分の意志で日本に帰ることに決めたのだ。なんだか、一時の「どうしてもアメリカに留まりたい」という気持ちが、今はすっかりなくなってしまった。
それよりも・・・
今の私は「東京に戻る!」という考えに、もう夢中。
私のsweet home、生まれ育った街、東京!東京を一歩も出ずに30歳少し前まで暮らしていた私にとって、初めての外国暮らしが、初めての非東京生活だった。
で、そこから出てみて初めてわかった・・・世界の大都市、東京という街のおもしろさ、便利さ、楽しさ、奥深い魅力を。なんてすごいところに住んでたんだろう、私!全然知らなかった。なんといっても私の実家は皇居から徒歩10分って感じだよ。ど真ん中に住んでたこともあまり自覚なかったなあ。一人暮らししてたマンションは三宿というとこにあって、ここも、車の免許がない子供は深夜にやってこれない、大人の店がたくさんあるおもしろいところだったようだ。当時は単なる地元だった。
アメリカに来てしばらくしたころ、たまに日本の雑誌を入手して、「今月オープンした店」なんて特集があると夢中になって見てしまうようになった。あー東京にいれば、たとえば今週末にでも予約してこの店のこのメニューが食べられるのよね。そんなこと考えるといてもたってもいられなくなるのだ。
でも、根っからの東京人ってわりとそういうことをしないんだよね。
つまり雑誌を見てレストランに行ったりあんまりしないってこと。地図を見てどこかを訪ねたりもあまりしないし。私も住んでいるころはそういうことをした覚えがない。
じゃあどうやっておいしい店を知っていくかっていうと、なんといってもクチコミ。この前友達と行っておいしかった店ー、とか、広告代理店の友人経由でもらったオープニングパーティのフリーチケットを利用して行ったらいい感じの店だったよー、なんて情報交換した、その翌月の雑誌にその店が掲載されて「あ、ここ行ったー」と、逆のパターンになったり。女の子なら彼氏とか上司とかが連れて行ってくれてどんどん店を知っていくのだ。
そんな生活が遠のいてもう5年。私は俄然やる気になってるんだよねー。今度東京に戻ったら、もうあちこち出かけるしかない。というか、私の年齢(34歳)で今さら「東京で遊びたいー」なんて言ってたら、「二人めの子供が小学校にあがるので大変よ」とか、「お受験で」とか言っている同年齢の友人たちに「・・・あんた、そんなこと言ってる場合?」とあきれられること必至なのだが・・・
私もう、そういう風に「そんなことしてる場合じゃない、結婚に向かわなきゃ」とか考えるの、いっさいやめたんだよね! 結婚できない女だってかまわない。
だって、大体25、6歳のころからずーーーっと、「そろそろやばいかも」とか言い出して、将来のことが不安でたまらなくて、数年先にいつも考えが向いていて、「恋愛してる場合ではない」とか、現状の自分を常に否定し、あせらせ、追いつめて・・・
で結局、34歳になっちゃったんだものー。
その間、2度も結婚のチャンスを目の前にしながら、結局選ばなかったんだからー。
要はもう、目の前の楽しいことを精いっぱい楽しむ、という風に方向転換しようと思っているのだ。だって、目の前の楽しいことを楽しむ、ということから、結局は本当に欲しいもの、本当に望んでいる未来に、現状がつながっていくものだと今は信じているから。
部屋の整理とかそうじをすると、気持ちも整理されるって本当だ。
資料を捨て、元婚約者と一緒に写っている3年以上分のデジタルフォトをCDに焼いてクローゼットにしまいこみ(だってこれはやっぱり捨てたくない。かといって彼氏にガサ入れされたときすぐに見つかるのも嫌だから)、婚約したときに撮ったパーティの写真などもまとめて片付けて・・・
とにかく、アパートの部屋から元婚約者と関連のあるものを一切、処分するかしまうかしていたら、次第に心が晴れてきて前向きな気分になっていくのがわかる。
写真一枚見ても、切ない気分になるのは否めない。でもそれをきちんと閉まって見えないところに片付けると、また一段階前向きになるし、「やっぱりこれで良かった」って思えるし、それからしみじみと、元婚約者に対する感謝の気持ちが胸に広がって行く。今までは、過去のちょっとした嫌な経験をほじくりかえしては、元婚約者を責めたり落ち込みなおしたりしていた。もうそういうことは二度としないだろうし、する必要もないのだ。とても解放された気分。
元婚約者との結婚をやめてしまい、ここ1年くらいモヤモヤしていたことがすっきりして、アメリカへのこだわりからも解放されて、私の心はもう東京生活に飛んでいるのだ。
風水によると、部屋の中身は自分の頭の中身と同じなんだそうだ。部屋が乱雑になっていると考えがまとまらない、というのは確かに風水じゃなくてもわかるような気がする。おもしろいのは、部屋が雑だと体の中も詰まってる?ことが多いそうで。部屋をすっきりさせると、便秘がすっきり解消されたりもするらしい・・・本当かな?
私の場合、この週末もマスタークレンズ実行中なので、風水効果かどうかはわからないけど、とにかくお腹はすっきり、全身空っぽ、という感じで、実に実に気分がいい。体が軽くて、何をしていてもウエストのあたりのすーっとした感覚がついてまわり、ほんと自己イメージが高まりっぱなし・・・鏡を見ると実際はそうでもないことを悟ってしまうのであまり見ないようにしてるんだけどね・・・。
前回、東京で彼氏と会ったときのこと、大学時代からの親友と彼氏とでランチに出かけた。
もとの会社で同期だった彼女は、今では総合職の商社ウーマンだ。出張で海外、国内を飛び回るパワフルな彼女は、また収入の方もパワフル・・・都内のオシャレーな地名の街で素敵なマンションに一人暮らし、実家は郊外にあり、車はボタンひとつで屋根がスルスルーっと開くタイプの外車のオープンカーだったり。
広尾の懐かしいカフェでお茶しながら彼氏と二人で彼女を待っていたら、窓越しに彼女の外車がすーっと歩道に寄せられた。ドアが開き、降り立つ彼女の姿はまさに、「Domani」とかの「キャリア女性の休日スタイル」特集の1ページ、そのもの。うわーかっこいい!とアメリカの田舎町で暮らす私はまぶしい思いで見つめてしまった。
で、彼女と話してたら、「なんかさ、私、やっぱりまだちょっと遊びたいかなー、とか最近思ってさー」と無邪気におもしろいことを言う。「なんか今楽しいんだよね。今週もずーっと出かけてて、空いてるの今日だけだったの、美樹ちゃんと会えて良かった」という彼女、週の前半は大阪出張だったのに後半は毎日午前に帰る日々だったらしいけど、一切、肌に影響が出てない!すごい。お金があると使う美容グッズも優秀なのかな・・・?
とにかく、彼女のような友達が私には東京にたくさんいて、彼女たちが帰国次第、私の負け犬バディとなることは間違いないでしょう。
「結婚できない女」って世間では、「結婚したくてしたくて、でもできないかわいそうな女性達」ってステレオタイプが出来ているのでは?
でもね、中には確信犯も大勢いると思うんだよね。私のように、結婚したくなくて逃げてしまう人もいるわけで。
さらにラブラブ大絶好調の彼氏がいたりすると、私たちの生活はかなり楽しい。収入があって、全部自分の自由に使えて、東京に住んでいて、彼氏がいる!って、世の中それ以上楽しいことなんてある?
という心理になっている私は今、スーパーで買い物していて子供が騒いでいたりするとマジでうざい!とか思ってしまうんだよね・・・、洗練されてキラキラしていて静かで雰囲気があって、何もかもキチンとしている、そういう大人の世界の対極にあるものが小さい子供。もう目に映したくもない、なんて今は思う。
そんな私もちょうど1年前は、逆の意味で子供を見たくなかった。当時の私は元婚約者と結婚したくて、子供が欲しくて、もうタイムリミットのような気がしていて、鬱症状になりかけていた。
子供を見ると、一生子供を持つ幸せは味わえないのではないか・・・? 一生、結婚できないんじゃないか? なんて、32歳にして人生に絶望して悲劇のヒロイン気分に浸っていた・・・、ほんと鬱症状だったんだなあ。
そんな私だから、また1年後とか半年後とかに「東京はもう嫌だ。カリフォルニアに戻りたい」とか言い出している可能性はかなりあるでしょう。
でも、今の気分は、Back to TOKYO!! そして、今このときの気分を大事にして生きていこう、というのが目下の私の方針なのです。
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