結婚したかった根拠と婚約破棄の理由
もしかしたら私の場合はただラッキーだったのかもしれない。息子の結婚が決まったと思ったらいきなり婚約破棄されて、相手の両親が私を良く思っていたわけがない。直接会ってイヤミの一言でもいいたい気分だったかもしれない。恨みがましいタイプの人たちであれば、直接文句を言ってきたり謝罪を要求してきてもおかしくなかっただろう。
それでもまだまだ婚約破棄なら、結婚したあと、子供が生まれたあとで何かがあるよりも遥かに大目に見られる。私から破棄したにも関わらず、2回ともどういうわけか私自身が同情されたり、腫れ物にさわるように扱われるのも意外だった。私自身は前回も今回も、解消の原因になった恋愛のほうで絶好調なために、事情を知ってる人に見られたら顰蹙なくらい、元気一杯だったのだが。
彼氏と結婚のどちらをとればいいかわからなくて非常に悩んでいた頃、「彼氏と別れたあとすぐはつらいかもしれないけど、結婚して子供でもできれば夢中になって忘れるのかな」と友人に話したことがあった。友人はそんな私に対して戒めるように「そんなこと言って、このまま結婚して子供が生まれてから『やっぱりダメです離婚したいです』なんて言い出したら、今とは比べられないほどのダメージと迷惑が発生するんだよ」と私に言った。
本当に今あのときの私の発言をふりかえると、結婚相手の人生や家庭というものに対していかに無責任だったか、自分で自分にあきれる。あんな状態で結婚できるわけがなかった・・・というのは、1回目の婚約破棄のときも、今回も、決断をしてずっとあとになってから明確にわかることなのだけど、当時は混乱していて自分の心理状態すら正確に把握することが難しかったのだった。
今の私は、日によって小さな揺れが何度かあるものの、基本的には今回の選択も正しいものだったと確信を深めつつある。
いったん婚約破棄を決めたらあとは後悔しない、と決めていたし、そうじゃなければ自分がつらいだけだとわかっているので、これから何があっても「これでよかったんだ」と思えるよう意識的に努力してもいる。
今回、結婚する機会を逃すのを惜しいと思っていた自分の心理の中には、もと婚約者に対する愛情ではなくて、「もう34歳だし、これ以上延ばすと子供が産めないかも」「もう結婚のチャンスがないかも」「34歳くらいで結婚するのが世間的にも一番かっこよくない?」「カリフォルニアの海辺で素敵な結婚式を挙げて、日本の友人をたくさん招待したい」・・・という、こうして今になって文字にしてみるとなんて情けない、と思ってしまうような打算的な思いがたくさん、たくさんあったことに気付く。
つまり、結婚したい一番大きな理由が「年齢」、つぎが「世間体」だったわけだ。結婚とは二人の人生を考えるべきライフイベントであるはずなのに、自分の体裁を保つために結婚したいと考えていた女であることを自省すると、これほど自分がイヤになってしまうことなんてないだろう。
数ヶ月の悩みの時期と最終的な決断を経て、私の考え方もずいぶんと変わった。
「年齢」について・・・「あなたが自分の誕生日を知らず、自分の年齢を推測するとしたら、何歳だと思うか?」という質問を、ある本で読んだことがある。
私だったら・・・・
きっと自分を30代だとはまさか思わなかっただろう。自信過剰と思われても仕方ないけど、それが正直なところだ。こんなことこのブログ以外には書かないし、周囲の友人に「私って30代には見えないよね」とか言ったりは絶対にしないけど、上の質問に答えるとしたらやっぱりそうなる・・・27、8じゃないかな。そう答えると思う。
そして、その本の中では、その質問のあとにこう続く・・・「あなたが思い浮かべた年齢、それこそが本当のあなたの年齢なのです」・・・そうだ、自分で思い込んでいて、周囲もつい、そう思ってしまうんだったら、それこそが本当の年齢に違いない。
もちろん私は、自分の体や顔の中に、老化を確実に感じる変化をたくさん見つけることができる。でも、最近発見したことなのだけど、そのうちのいくつかは、「老化」と思い込み、年齢のせいにしているだけで、実は自分が自分の手入れを怠った結果かもしれないのだ。
たとえば10年前の写真を見ると私は今よりも目が一回りくらい大きくて、パッチリ、すっきりしていて、目じりも気持ちよくスッとあがっている。
今は上目遣いにしてもまぶたがすこしかぶさる感じで、あー、重力でまぶたがたるんでくるんだなあ、と悲しく考えていた。
が、彼氏と出会って、恋愛パワーが私の中に復活して、また自分の外見に気合をいれる日々が始まり、私は例の「レモネードダイエット」で一気に5、6キロ痩せた。
すると?
目の形が10年前とほぼ同じに戻ったのだ。他人にはわからないけど、自分にははっきりとわかる、そういうレベルの違いなのだが、私にとっては奇跡が起こったような感動だった。
さらに、日本に帰った際にまつ毛パーマをかけ、適当に一度塗りしていたマスカラは、ランコムのカウンターに行って最新のものを購入、資生堂のビューラーの替えゴムはたくさん買っておいて少しでも弱くなってきたら即取り替えるように心がけた。
その結果・・・
なんだ、何も変わってないじゃん!と私は鏡の中の自分を見て嬉しい驚きの声をあげたのだった。
いや、何も、というのはウソで、やっぱり目じりが微妙にさがっているのがわかる。ちょっときついくらいにすっとあがっていた10年前と違って、今は穏やかな目元になっていると思う。
でも、その目は、彼氏が最初に私を好きになったポイントなのだ・・・「美樹ちゃんを初めて見たとき、その優しい目にすごく惹かれた」という彼氏は、私が10年前に流行したちょっときついカーブの眉に、カラーコンタクトを入れ、挑戦的な目でカメラに向かっている写真を見て、「この美樹ちゃんはきつそうでやだ!!この頃会ってたら恐くて絶対話しかけなかった!今だから好きなんだよ」と言ってくれた(その頃会ったら、彼氏は14歳なんだけどね!)。
はい、そういうわけで、この彼氏の言葉とともに私にとって「年齢」はどうでもいいことになった、いえ、今34歳でよかった、と思えるようにさえなって、問題は解決。
次に「世間体」だけど、これはもう、恋愛も真っ只中で「二人の世界」に入ってしまっている私にとって、世間体なんて見えない、存在しないのだ。
だいたい世間体の正体ってなんだろう。ぼんやりとしていて具体的に誰のことなのかよくわからない。私のいないところで交わされる噂話が世間体なら、本当にくだらない、取るに足りないことだ。
素敵な結婚式ができたのになー、という、自分自身の言葉が、今の私にはすでに理解できない。たった1日のために、一生の間違いを選ぶなんておかしい。私の両親は最終的にはいつも、私の味方だ。「相手のご家族に迷惑をかけて!」なんていう非難の言葉は一切なく、「美樹ちゃんが幸せになってくれるのが一番の親孝行だから」と言い続けてくれた。私は勝手に、両親以外の親族もそんな風に思っていると決めている。
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私の部屋は、ライラックと白の組み合わせでインテリアの色をゆるやかに統一している。ライラックは濃淡のバリエーションをそろえて、白いカウチにワインレッド、明るいフューシャピンク、やや青みがかったピンク、と順番にピロウを並べている。ベッドルームの壁はうすいうすいピンクがかったクリーム色。シーツも、ピロウとコンフォーター、内側のブランケットと色が濃いピンクから軽やかでキュートなうすいピンクにグラデーションとなるように色を選んでいる。
彼氏がこのベッドルームに泊まり始める2日前に、シーツやピローケース、タオルの類を全部きれいに洗いあげる予定。清潔なシーツにくるまって眠ってほしいから。でも、前日じゃなくて2日前、だ。
だって、一晩は私一人で眠って、私の肌も少しだけなじませておきたいもの。私の匂いが少しだけ混じったときに必ず・・・「いい匂い!」って彼氏がいつも言うから。香水でも、ルームフレグランスでも。
そんな小さなことにこだわって、彼がやってくる日を待っている・・・・ああ、恋愛っていいなあ、という感じ。
私には世間一般の道徳とは別に、独自のモラルがある。そのモラルに関して私は厳しいモラリスト。それは、自分の体にいいことをすること、体にとって自然な生活をすること、自分の精神的健康を大切にすること。
だから、世間体のために自分の体や精神を犠牲になど、絶対にしないのだ。たとえその結果、もと婚約者とその家族に多大な迷惑をかけてしまったとしても・・・もちろん私には罪悪感があって、そのことで相応の苦しみを味わったと思っている、でも、もう元婚約者のためには十分な涙を流したと思うことに決めたのだ・・・長期的に見れば、これが彼らにとっても正しい選択だったのだと信じている。今、自分を捻じ曲げてでも結婚という枠にはめこんだって、あとで破綻したときに、彼らはもっと大きな被害をこうむることになるのだから。
かなり自己中心的で独断に満ちているけど、以上が今のところの、私の「婚約破棄の理由」に対する見解なのだった。
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