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恋愛体質の女は結婚できない?
26歳と33歳で二度の婚約破棄に至る理由は、結婚よりも恋愛をえらぶ女だから。アメリカ在住の私は34歳。24歳の今彼との恋愛を中心にアメリカ人の元婚約者に元彼を加えた三人の男性との恋愛事情
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元婚約者からのプロポーズのタイミングと迷い

2016年7月23日土曜日 タイミング プロポーズ 婚約

元婚約者がカリフォルニアの両親の家に一緒に行く旅行を計画しはじめたとき、元婚約者が私にプロポーズするタイミングであることはすぐに見通せた。

アメリカでは、プロポーズのタイミングというものがけっこう重要だ。というより、結婚式のようにある意味儀式化されていて、典型的なプロポーズの手順というものが存在する。

それは男性が女性の手をとり、ひざまずき、自分のひざの上でその手をにぎりながら、まず女性のフルネームを呼びかけ、次に「Will you marry me?」と聞く、というもの。

これが正式なプロポーズということで、元婚約者はこの日まで、私に「結婚しようよ、ね」と何度も言っていたのにもかかわらず、その瞬間まではまだ正式には結婚の約束をしていないことになっていたのだった。

私たちはキャンパスの近くのビーチを歩いていた。とても懐かしい、思い出深い場所だった。二人ともここに住んでいたころはお金のない大学院生だったから、サンドイッチを持ってビーチでお散歩というのが典型的なデートだったのだ。

その日は、1年中心地よい気候が続くカリフォルニアでも、1日か2日あるかというほどの素晴らしいお天気の日だった。空は吸い込まれそうなほど澄んだ青。海の色は、青をとおりこしてエメラルド色に輝いている。白い砂。いつ来ても学生時代と変わらないビーチの景色に私は歓声をあげて、サンダルを脱ぎ捨てて裸足になった。そして水平線が見渡せる場所まで走っていって息を飲んだ。

そこでは、まさにこれから結婚式が始まろうとしていて、白い砂浜の上に白い椅子がたくさん並び、その正面にはこれも真っ白な結婚の誓い用の台が置かれていた・・・椅子はきれいな淡いピンク色の花でかざられ、透き通った白いリボンで結ばれて、それが潮風に揺れる様子は、これ以上幸福な景色があるだろうか?と思ってしまうほど美しい。

ここで結婚式ができるんだね!と私たちはおどろいて、波打ち際の結婚式場を眺めた。それから数分後に元婚約者がプロポーズすることを私はわかっていて、そしてまだ、内心では迷っていた。でも私はこのとき、エメラルドの海をバックに白い椅子が並んだ結婚式の様子を見て、これは神様からの何かのサインなのではないか、とそんなことを考えたのだった・・・

タイミングそれは神様からのサイン・・・私はサインを信じるような宗教を持っているわけではないのだけど、このときはもう、迷って考え過ぎていて、自分ではない他の何かに、決断をゆだねてしまいたい気分になっていたのかもしれない。

今この瞬間に、元婚約者と二人であの結婚式を見つめていた時点に戻れたら私はどうするだろうか・・・

元婚約者の上着のポケットには婚約指輪を入れた箱がある。私は結婚式が醸し出す「幸福」のエネルギーにあてられたようになって少し呆然としている。波の音が聞こえる。足下の砂の感触。あの瞬間に戻れたら。

YES!! と言って元婚約者に飛びついたそのとき、青空を何羽もの鳩が横切っていった。真っ白い鳩。私は一瞬、今自分がいる場所が現実ではないような錯覚に陥った・・・白い砂浜、白い結婚式の椅子、白い鳩、青い空、青い海・・・周囲には白と青しか存在しない不思議な世界。そうだ、このビーチを何度も散歩したことがあるのに、白い鳩なんて今まで見たこともなかった・・・

あまりにも映画のような出来事だったので、元婚約者も驚いて、「念のため言っておくけど、僕が鳩を用意したんじゃないよ!結婚式があることだって知らなかったよ」と言っていた。元婚約者はこの地元の出身なのに、ビーチでの結婚式も初めて見たと言う。私はこのビーチでの出来事がすべて、神様が私に「それでいいんだよ」と話しかけているようで嬉しかった。このビーチから彼の実家に帰る間は、本当に幸せで幸せで、夢の世界を歩いているような気分だった。街の景色、ビーチ沿いの可愛らしい家並み、すべてに魔法がかかって、私の幸せを祝福しているかのようだった・・・ああ、あの頃は今の私のような状況が、いったい誰に想像できたというのだろう。人生って本当に何が起こるかわからない。これは本当に私が選んだことなのだろうか。

夢はすぐに現実へ切り替わった。元婚約者の実家につくと、息子がプロポーズすることを知っていた両親が期待の笑顔をいっぱいに浮かべて、「so?」それで?と問いかけてきた・・・Somebody Said yes? 誰かさんがイエスと言ったのかな?おどけた調子で確認したのは彼の父親だった。誇らしげな元婚約者の顔。それからは、おめでとう、おめでとう、なんて素晴らしいんでしょう、ありがとう、カナ、私たちの家族にようこそ・・・おめでとう・・・祝福の嵐と、ハグの嵐の連続。その日の夜は親族が集まって婚約パーティのような騒ぎになり、私はもう顔も覚えていないくらい大勢の人に抱きしめられ、頬にキスされて、おめでとう、と祝福された。

夜はガーデンパーティになった。カリフォルニアの夜のガーデンパーティに一度でも参加したことがあったら、それがどんなに祝福する気分にふさわしい舞台設定か、想像できると思う・・・ゆっくり、ゆっくり夜になっていく、長い夕暮れ、空全体が芸術品のように淡いピンクとグレーに彩られて、吹く風はどんな人の心をも優しくしてしまいそうなほど心地よくて・・・チェロの音色が常にどこかから聞こえて、いつのまにか庭を縁取るキャンドルに火が入り、ディナーを終えるころには少し離れた丸いテーブルに真っ白いテーブルクロス、その上にチョコレートクッキーやブラウニー、趣向を凝らした小さいデザートがいっぱいに並べられる。

銀食器がお皿にぶつかる賑やかな音、人々の興奮したおしゃべりの声。シャンパングラスがあちこちで、何度も持ち上げられる。あなたはとても美しい、カナ。そんな風に見知らぬ人に話しかける。幸せがあなたを今日、特別美しく見せていると。ありがとう、と私は答える。I'm happy. I'm very, very happy. テーブルに飾られた薔薇の花弁が、白いテーブルクロス一面に散らばっていた。

元婚約者との結婚をあきらめようと決意するたびに、思い出すのがこのパーティのときの光景だ。

地平線から月が出ようとしていた。いちはやく気付いたのが元婚約者で、グラスをフォークでカンカン、とたたいてみんなに知らせた。私たちはみんな立ち上がって、言葉もなく月を見つめた。月明かりとキャンドル。目の前には薔薇の茂みがあって、青い月明かりの下、にじむような濃いピンクの薔薇の花が浮かび上がり、幻想的なほど美しかった。婚約したばかりの私たちを囲むようにして、みんな、so beautiful、と繰り返すばかりだった。それからダンスの時間が始まった。

あの世界を手放すの?・・・そう私は自分に問い続けるのだ。子供の頃、日本語に訳された外国の本を読んで思い描いていた未知の国、お姫様と王子様の世界は、ちょうどこんなイメージではなかったか。ずっとずっと夢見ていた世界に私は今いるのではないだろうか。その日初めて元婚約者は私を「フィアンセ」と呼んでみんなに紹介した。その甘やかな響き。フィアンセ、フィアンセ!この幸せのパッケージみたいな世界を、自分から手放すの?

でも、とまた自分で自分に反駁する。長く長く続く結婚生活は、おそらくそんな祝福のひとときとはまったく関係のない、日常の続きだ。そこにいるのは私と元婚約者の二人であって、豪華なパーティの出席者がいつまでも私たちを囲んで祝福し続けるわけではない。毎日のキッチンとテーブル、毎日の雑務。日常にシャンパンやリボンやチェロの音色は存在しない。私が失いたくないと思っているのは、本当は結婚とは全然関係のないものではないのか。

それから私はふと思い付く。

あのパーティで、元婚約者が誰かと話しこんでしまうと、私は話し相手がいなくて、ときどき話しかけてくれる人がいてもなかなか会話を続けることができなくて少し居心地が悪かったりもした。私はこのとき、映画の一場面のような美しいパーティの風景の中で、自分がまるで傍観者のようにその場面を見ているという違和感について、深く考えることをしなかった。この風景を両親に見せたい、日本にいる友達に見せたい、そんな気持ちばかりで写真をたくさん撮っていた。デザートが出ればデザ[トを、月の出を見れば月の光を、キャンドルがうつるように工夫して何度も撮り直した。

なぜ、写真をとって日本にいる家族や友人に見せることがそれほど私にとって重要だったのだろうか、と考える。写真をインターネット・フォトアルバムにアップロードして大勢に送ろうと私は計画していた。そのことがとても楽しみだった。私がアメリカで婚約したことと、こんな風景の中にいるのだということを・・・私はこのときもまた、理由がわからないままに、誰かに何かを証明しようとしていた。このパーティのときの幸福感は、どこか達成感に似ていた。それは、愛する人とこれから一生を過ごすのだと決まったときの喜びとは、少し違うものだったような気がする。

一生そばにいるとこの日、決めた元婚約者と、私はまた翌日、空港でお別れをする。そしてその別れ際はそれほど寂しいものではないのだった。離れがたくて、いつまでも抱き合ったり、泣いたりすることがついに一度もなかった私と元婚約者の、いつもの空港でのお別れ。

今こうしていてもそうだ。今、今夜、明日、これから一か月、誰と一緒にいたいかと聞かれたら彼氏の名前が真っ先に出てくる。だからといって私は、あの婚約した日の幸福と安堵感と、パーティの美しさと、誇らしい気持ちとを、簡単に忘れることができない、手放すことができない。一度はあそこにいた全員を自分の家族だと思ったのだ。このことは私が生まれる前から決まっていた。そんな運命的なものさえ感じた。あの青い月の、あまりの美しさに・・・

本当にどうすればいいのだろう。  
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