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恋愛体質の女は結婚できない?
26歳と33歳で二度の婚約破棄に至る理由は、結婚よりも恋愛をえらぶ女だから。アメリカ在住の私は34歳。24歳の今彼との恋愛を中心にアメリカ人の元婚約者に元彼を加えた三人の男性との恋愛事情
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熟女の奇行

2016年7月28日木曜日 熟女

とある熟女の知人について言及させてもらいたい。

ポジティブ思考は悪いことではない。私も基本的に、ポジティブ思考により実際に人生がポジティブな方向に進む、幸せになれる、という説には賛成する。
この熟女も、普通に接していると、一見、本当にポジティブ思考の明るい人に思える。

どんなに嫌なことがあっても、「こういう風に考えれば、良かったと思えるし」などとよく言う人だった。いつも楽しそうだし、動作やしゃべりかたもテキパキしていて若々しいし、お化粧やおしゃれも手を抜かず、「こんな40代になれたらいいな」と20代、30代の後輩たちが憧れるようなタイプの女性だった。

離婚という出来事もポジティブパワーで乗り越え、落ち込む様子はほとんどないし、次々とターゲットの男性を見つけては明るくアプローチしていく。けっこうデートにまでこぎつけたりしていた・・・どれも恋愛関係にまではいたらないのだが。話はおもしろいので、ただの楽しいおばさんとか気の合う女友達になってしまいがちなのだ。なかには恐れをなして逃げて行く若者もいたり。

しかし後から考えると、時折「???」と不可解な出来事に接することがあった。



例えば彼女が言うところによると、「あのおじさんね、若いときは私に夢中で、さんざん追い回されたのよ」というおじさん当人に聞くと、照れでもなんでもなく、「何の話?」とポカンとされたり。あるいは、「うちの子は本当にいい子でね。大好きなチョコレートキャンディを、自分で1日1個、って決めて、それ以上は絶対食べようとしないの」なんて自慢していた翌週に、その当人の子供が、そのチョコレートキャンディをわしづかみにして大量に口に詰め込んでいる現場を目撃したり。

あるいは、「別れた夫はまだ私を愛してるみたいでね。デスクトップの壁紙が私の写真なのよ。困ったわ、私はもう何とも思ってないのに」とため息をついていたそのちょっとあとに、そのもと夫のデスクトップを見たら、それは確かに彼女の写真であるものの、フォトショップで変形させて思いきり太ったおばあさん風にしている、非常に悪意を感じられるものだったという・・・(離婚の際に何もかも財産をとりあげられて、実際、元旦那は彼女を憎んでいてもおかしくない立場だ)。

つまり、「嫌な状況も解釈次第で良く思える」とか、「嫌いな人も考え方次第で好きになれる」というのを通り越して、事実を自分に都合の良いようにまったく別な形に変えて解釈してしまい、周囲にもその通り言い、それを自分も信じ込んでしまう、という、やや病的な傾向があったのだ。

それでも、ときおり変な事実があっても、私や他の仕事仲間は基本的に「あの人はいつもポジティブで幸せそう、実際幸せな人。いくつになってもきれいでモテる人」という認識を維持していた。それは、彼女が自分の強烈な思い込みと自信に基づいて、常にそのイメージを強調して話していたからで、ほぼ毎日聞かされる私たちは、ほとんど暗示をかけられていた状態だったのだ。

彼女が本当は不幸で、それを幸せに見せかけようと努力していたのか、それともポジティブ思考が極端になって本当に「うちの子はいい子だ」「あの男は私に夢中だ」と信じていたのかどうかは、いまでもはっきりわからない。

しかし、彼女が意識していたかどうかは別として、客観的に見た彼女自身は、実は非常に寂しい人だったと思う。しょっちゅう自宅でパーティを開き、大勢の人が集まるけど、「親友」と呼べる存在がいない。「誰々とデートしちゃった」と自慢するけど、恋人と呼べる人はいない。

その寂しさを自分で認めようとしていないのか、気付いていないのか、とにかく彼女は、自分がいかに愛されている存在か、重要な存在か、男にモテるか、ということを周囲に証明し続けなければ気が済まなかったのだと、今になって気が付く。当時は彼女の言うことをいちいち真に受けて、「すごいなあ、こういう人っているんだな」とひたすら感心していたのだが。

さて、そんなある日に彼氏が登場し、この熟女にたちまちなつき、なんでも彼女に打ち明けたり相談するようになる。熟女はたちまち有頂天に。私たち仕事仲間にもさんざん「彼氏くんって私を好きらしいのよ。困ったわ、どうしよう」とか、少しも困ってない喜び一杯の表情で自慢げに語っていた。

そこへ、彼氏の「実は美樹さんが好き」告白である。

いったん昇りつめた熟女の自尊心は、ショックとともに急降下。とっさに世話好きおばさんに切り替わったものの、内心、納得できない思いが残っていたのだろう。私と彼氏と熟女と3人で会っても、彼氏が「目をじっと見ていた」だけで、「やっぱり美樹ちゃんじゃなくて私を好きなのよ!」と結論してしまうのは、以上の理由によるものなのだ。

だがしかし、彼女にもやがて自分の勘違いにはっきり気付くときが来た。だいたいそのあたりから、彼氏が私にどうしようもなく恋してしまい、そのつらい思いを切々と熟女に語りだすようになったからだ。涙ぐんで「僕は好きなのに・・・美樹さんの気持ちがわからない」と語る彼氏を目の前にして、さすがのスーパーポジティブ思考でも、「それでも私が好きなのね!!」と思うわけにいかない。

ひとたび勘違いを思い知ってからの彼女の態度の変化は、(ちょっと、この人、変だわ)と私にも気付かせるほどの激しさではあった。それまで得意絶頂で「彼氏くんがね、彼氏くんがね、こんなことを、あんなことを私に言って」と、ノンストップで自慢話をしていた(まるですでに恋人同士のようなノリで)彼女が、ぷっつりと黙り込んだまま黙々と仕事をし、ランチタイムを過ごすようになってしまい、私も信頼できる同僚に「・・・恐い。身の危険を感じる」と相談してしまったほどだ。

しかし、ここで話は終わりにならなかった。意気消沈した熟女が、そのまま大人しく離れて行ってくれれば、私も楽だったのだが。

テンションが下がった状態を短期間で乗り越えると、またも熟女は態度を豹変させた。それは決してあからさまな悪意を示す行動ではなく、一見、親切な行為とさえ思える態度なだけに、気付かないうちに取り返しのつかないことになっているという、タチの悪い、彼女の私への復讐だった。

私は知らなかった、気付かなかった。このとき、彼女が、煮えたぎるような嫉妬に駆り立てられ、自分の感情をぎりぎりでコントロールしながら、私を憎悪の目で見ていたことを……
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