彼氏と結婚に求めるものは
子供の頃から夢見て、いつか実現すると常に口にしていたこと・・・・、アメリカに住むこと、アメリカで結婚してハーフの子供を産んで、オレゴンの大自然の中で育てること。南カリフォルニアの広いプール付きの別荘。そんな突拍子のないことが、本当にそのままかなってしまった。かなおうとしていた。ずっと待ち望んでいたプロポーズ、婚約、暖かい彼の家族の歓迎。とても誠実だった婚約者。私の夢を実現しようとしてくれていた、そんな相手に「やっぱり結婚できません」と言って傷つけてまで・・・突然現れた若い男の子とただ一緒にいたくて、婚約解消してしまった。その男の子のこと、まだ良く知りもしないのに。その男の子と結婚したいというわけでもないのに。 Are you crazy?! 頭がおかしいんじゃない?!って周囲に言われたのも、仕方がないことだったかもしれない。
この半年間、幾度同じループをくるくる回って同じ展開で同じことを考えたか・・・
頭で、理屈で、考えて考えて、最後に浮かぶのが彼氏の優しい笑顔だ。笑顔、ただそれだけですべてはかき消されて、私はループの一番最初に一気に戻る・・・
彼氏が好きなんだもの、なんで一緒にいちゃいけないの?
恋愛パワーってすごいよね。人は遺伝子を残したがるD元婚約者Aの乗り物だという説があるけれど、その説に基づいて考えれば、人の最も強い欲望は子孫を残すこと、となるわけで、私の場合、子供を産みたいなら最短距離はやはり、婚約者とそのまま結婚することだった。それなのに私は、結婚の対象としては難しい相手、彼氏を選んだ。つまり、私の彼氏への恋愛は、元婚約者Aの支配力に勝った?
いや、もう少し考えてみるとそれはやはり違う。私はやっぱり、本能レベルでは彼氏の子供を産みたいんだと思う。社会的な要素(年齢の差、二人の育った背景の違い、住む場所の違い、価値観など)を一切排除して、生物の男女として向き合ったとき、私が強烈に惹かれるのは婚約者ではなく彼氏だったということなのだと思う。意識ではとらえられない何か、フェロモンだかオーラだかわからないけど、遺伝子レベルでは彼氏の遺伝子が発するシグナルに惹かれて、乗り物である私のレベルでは単に外見が好みで、私はせっかく決まった婚約話をご破算にしてまで、若い男の子との恋愛に走ってしまったわけだ。
ああ、こう書いてみるとなんだか社会性がなくて、本能と欲望のままに行動する、浅はかな女みたいな私。でもある意味、社会的な枠組みと世間体というプレッシャーによってその崩壊を抑制する結婚よりも、本能で惹かれあった結びつきのほうが強力なのかもしれないな。だから、私の場合もしかたないのかなー、本能なんだから。
しかし、強烈に惹かれあった結果の結婚が必ずしも幸せなものになるとは限らないことを、私は周囲の多くの例で知っている。もしかしてそれは、本能の場合、子孫を残すため、子供が母親に100%頼らなくても大丈夫になる3年間のみ、恋愛が続くように設定されているからなのだろうか。一方、めくるめく情熱の恋愛はなくても、友達夫婦みたいになって長期間一緒にいると、家族愛とかお互いへの責任感がうまれて逆に長く続くということなのか。やはり恋愛感情のみに頼った結びつきは、いっときは誰にも引き離せないほど強烈でも、しょせん短期決戦型なのかしら・・・
なんてことをいろいろ考えるにつけ、私は恋愛がしたいんだなあと再確認する。彼氏との恋愛の結果が結婚に結びつかなくてもいい、むしろ結び付けたくない私。かといって、相手もそうなのは嫌で。かといって、「今すぐ!」と毎日迫られるのも嫌で・・・、今の彼氏くんの、結婚したい!子供が欲しい!と毎日のように言いつつ、「でも、もう少し恋人同士でいさせてね」とささやけば、「ウン!そうだね!」と笑顔でうなずいて頬にチューしてくれる、こんなスタンスが理想かも。
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彼氏と東京で会ったときのことだった。(ちなみに私たちは仕事で東京と西海岸を行ったり来たりしているので、海外遠距離恋愛にしては月の半分くらいは会えるし、ビジネスクラスで移動できるし、けっこう恵まれているのだ。)
久しぶりの雑踏の中を歩いて、私はちょっと疲れていた。急に気温が上がって、ダウンコートを脱いで手に持つと、裾をひきずりそうになるし、人にはぶつかりそうになるし、だんだん機嫌が悪くなりそうだった。
すると彼氏が私の様子にすぐ気がついて、「コート持ってあげる。貸して」と手を差し出した。私は男の子が重い荷物を持ってくれるのは嬉しいけど、女物のバッグやコートまで持ってあげているのを見るのは、他人のカップルでも自分の彼氏でもあまり好きではないので、いいよ、大丈夫、と断った。
彼氏はかまわずに手を伸ばして私からコートを取り上げた。そしてもう片手で私の手を握って歩く。急に身軽になった私はややご機嫌が直りかけて彼氏を見上げた。彼氏の身長は、180センチと少し、くらいかな。私は背が高い年下の男の子が好き。年下だけど、やっぱり男の子で、頼りになる!って感じ、この年齢差と頼りがいのギャップになんとも、年齢差恋愛の醍醐味を感じるんだな。そんな背の高い彼氏が手に持つと、私のダウンコートもまったく裾が地面に着くことなく、軽々と小さく見える。それから、腕に黒いコートをかけた彼氏がすごく素敵。なんなのかな。うでにナプキンをかけたソムリエ風に見えるせいかな(恋愛モードなので、すでに意味不明)。
私たちはデパートのエスカレータに差し掛かり、私が先に乗って、一段下に彼氏が続く。こうするとやっと、私と彼氏の目線が平行に近くなるくらいだ。目が合うと彼氏はとても嬉しそうににっこりとする。それからエスカレータを昇りきる間、ずっと口説き文句みたいな言葉をささやき続ける。きれいだよ!このデパートの中で一番、東京中で一番きれいだよ!なんてとんでもない言葉を(お願いだから普通の声で言わないでね、恥ずかしすぎる!!時差ぼけで疲れてるしメイクもとれかけてるし・・・)。
エスカレータを降りる直前に、私の額とこめかみあたりに優しく続けてキスをする。それからまた手をとる。もう片方の手に、私のダウンコート。ああもう・・・、
結婚相手に求めるのは、収入?学歴?社会的地位?家柄?私ね、そんなもの何一ついらない。私の顔色ひとつで敏感に反応して、私がいつも心地よくいられるように心を砕いて、私がメイクもとれかけの顔でも東京で1番きれい!と言って、私以外の女なんて目に入らない、私の癒し系彼氏くん。それも私より10歳も若くて可愛くて背が高くてとっても外見が好みなんです。こんな彼氏くんが一生そばにいてくれたら、それ以上の幸せなんてないんじゃないかしら。
だって、収入なら私が稼ぐし。すでに稼いでるし。学歴もほら一応、米国大学院卒だし。社会的地位も家柄もかなり・・・。なんていうか、自分で間に合ってるのよね、そういうのは。だから私が欲しいのは彼氏くんだけなんです。
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そんなわけで、すでに私に婚約者がいた状態のときからプロポーズはしていたようなものの、最近はもうちょっと具体的に「いつ親に会ってくれるの?」などなどの質問が増えてきた彼氏くん。私はちょっとしばらく結婚について考えるのはお休みしたい。
けれどひとつ確実なのは、エスカレータを降りる直前の彼氏の優しいキス、私を1番きれい、と言う彼の笑顔、私にとってそれは、人生が大きく変わってしまうほどパワフルで強烈なもの・・・愛しくてたまらない!ってこと!
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