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恋愛体質の女は結婚できない?
26歳と33歳で二度の婚約破棄に至る理由は、結婚よりも恋愛をえらぶ女だから。アメリカ在住の私は34歳。24歳の今彼との恋愛を中心にアメリカ人の元婚約者に元彼を加えた三人の男性との恋愛事情
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彼氏と元婚約者の電話の違い

2016年7月18日月曜日 元婚約者 電話 彼氏

「僕のお姫さま。朝だよ。起きて」

とかいうのが、日本にいる私の新しい彼氏の典型的な第一声。

彼氏は仕事を終えて帰宅したところ。東京は今頃、夕闇と夜の空気が混じりあう、独特の華やかな時間帯だ。彼氏の声は1日の活動のエネルギーがまだ残っていて張りがあるのに、「んー、オハヨウ」とか答える私はまだ頭が半分かすんでいて、頭に浮かぶ東京の街のイメージが、電話ごしに伝わってくるものなのか、目覚めるまで見ていた夢だったのかもよくわからない。

このテンションの違いで本当に、海外遠距離恋愛をしてるんだなあ、と実感する。だってこちら側にいる私の世界は東京とあまりにも違う。ベッドルームに差し込む光の明るさ。見渡す限り遮るもののない空。どこか潮の香りがして、パティオから木の葉ずれのサラサラという音さえ聞こえてくる、静かな、静かな朝。

彼氏はもどかしそうにこんなことをいう。「ねえ早く目をさまして。普通のお話しようよ」、なんともストレートなお願いでおかしくなる。でも朝がとーっても弱い私に「普通のお話」するのはあと3時間くらいかかるかも。そんなわけでまずは起こしてくれたことのお礼を言って、いったん電話を切り、出勤準備をひととおり終えてから、またかけなおしてもらう。バッグにお財布を入れたり、キッチンバーのガラス皿から車のキーを取り上げたりしながら話し続ける。

「じゃあ、でかけるから、またあとでね」
「え!!だめ、運転しながら話して」

とまたストレートにお願いされて私は携帯を片手にハイウェイまで運転する・・・「運転恐いから、もう切るね」と言うまで彼は話し続けて、やっと切ったと思うと、助手席に置いた携帯からメッセージ着信のメロディ。ハンドルを握りながら、私は半分あきれて、でもにっこり微笑まずにいられない。会社のある出口でハイウェイをおりかけるとまた同じメロディの音。オフィスに入るころにもう一度。で、デスクに到着してコンピュータを立ち上げるとすでにメールが待ち構えている・・・

こんな毎日がもう数カ月続いているわけだ・・・お互いに日本とアメリカを行き来して会っている時間を除いて。最初だけなのかと思っていたら、むしろ日が経つにつれてメールにしろ電話にしろ量が増えてきた。私をお姫さまと呼ぶ彼氏。電話を切って10分後にはまた「声が聞きたかった!」と寂しがる彼氏。

私はこんなふうに常に電話やメールで接触し続けようとするタイプの男性を、なんだか自分の世界がないみたいで、自立していないって気がして、もともとあまり好きでなかったような気がする。

婚約解消したばかりの彼、元婚約者の場合。私と元婚約者は3年以上、アメリカ国内で遠距離だったけど、その間、二人で「次に電話する日」を決めて連絡をとりあっていた。月曜、木曜、土曜、というふうに。つまりその場合火曜、水曜、金曜、日曜は、電話もメールもいっさいしない、お互いに。3年間、私はそれを寂しいと思ったこともなかったし、約束がなくても声が聞きたくて電話する、なんことも一切なかった。私は外国での生活や仕事や、キャリアのたちあげに必死だったし、彼のほうも仕事がとても忙しかったから・・・恋愛は生活の中心ではなかった。そしてそのことを私たちふたりとも、とても誇りに思っていた。自立した二人だから、本物の愛で結ばれたカップルになれるのだと、私も信じていた。

実際、そんなふうにおだやかに続いた相手と結婚するのが、一番幸せなんじゃないかと、婚約したときは自分を納得させていたのだ。一緒にいるのが自然で、無理がなくて、嫉妬や不安に悩むこともない・・・信頼関係だけは揺るぐことのない相手。過去に恋愛中心の生活で疲れ果てたこともあるだけに、そんな関係を築けた元婚約者とのことをとても貴重な出会いだと幸せに思っていた。

そんな気持ちを根っこから揺るがしたのが彼氏の出現だった・・・、彼氏にとっては私がすべてで、私のことばかり毎日考えていて、私がちょっとでも嫌な思いをしたり具合が悪くなると心配で心配でしかたなくなってしまう。

そういうのが本当の愛情なのだと言いたいわけではない。私にはよくわからない。理屈ではどんなに考えても元婚約者との結婚を進めるべきなのに、私が「今、一緒にいたい人」は常に彼氏だったのだ。目の前にあるその優しさから、どうしても、どうしてもあきらめて去ることができなかった。今日会いたいのは彼氏で、明日会いたいのも彼氏だった。その一方で一生過ごすべきなのは元婚約者だと考えていたのだ。しばらくの間は。今もどこかで少し。

彼氏のことをどうすればいいのかわからなくて、まだ心が揺れている時期、元婚約者と電話で話していたことがあった。会話の途中で私は急にお腹が痛くなってしまって、「いたたた・・・」と思わず口にした。私は昨年に子宮内膜症と診断されてからときどき下腹部に鋭い痛みを感じることがあって、元婚約者は私が急に立ち止まったり、お腹を押さえてうずくまったりすることにもう慣れていた。痛いけど、ただそれだけで痛みが治まればまたもとに戻る、長くても30秒くらい、ということも知っていた。だからなのだろうけど、そのとき元婚約者は「お腹いたい?じゃあまた今度ね。」とただ、電話を切ろうとした。私は一瞬言葉をなくして、それから、そのとき何かがはっきりわかったような気がして、ただ「うん、またね」と答えてそのまま電話を切った。大丈夫?の一言もなかった。優しくも冷たくもない、本当にただ電話を切るためだけの「じゃあまた今度ね」だった。そのあとベッドの上で痛みをやり過ごしながら、私は元婚約者と一生を過ごしていくことについて考えこまずにいられなかった・・・電話では何もできない、とわかっていても、ただ、心配してくれるだけで楽になることだってあるのに・・・それが恋人の存在の意味だと私は思うのに。

そのもう少しあとで、私は少し風邪をひいて熱を出した。寝込んでいたら彼氏がお見舞いにきてくれた(彼はちょうど出張でカリフォルニアに来ていた)。彼はキッチンに立って葛湯やおかゆを作ってくれて、眠っている私の枕元にただ座っていて、夜中に汗をかいて起きたら、すぐにクローゼットから新しい服を持ってきて、タオルをお湯で濡らして、私の全身を拭いてすぐに乾いた服に着替えさせてくれた。

そんなことを誰かにしてもらうのは子供のころ高熱で寝込んだとき以来。本当はそんな重病ってわけじゃなくて、タオルで体を拭くのも、必要というより愛情表現に近いものがあったんだけど・・・彼の目は真剣で私を本当に心配していた。もう、そんな心配することないよ、微熱なんだから、ばかねえ、と笑っているうちに、ふと少し前の元婚約者との電話のことを思い出して衝動的に泣き出したくなった。風邪で少しおかしくなっていたのかもしれない。泣きながら彼氏に「私は結婚しない。あなたとずっと一緒にいたい」と言ってしまいそうな気持ちになった・・・気持ちになっただけで、実際は言わなかったけれど。

実際に結婚をとりやめたのはその数カ月あとのことだった。

自分でも気がついていなかった。私はすごく、すごく疲れていた。海外生活はエキサイティングとか華やかとかでは決してなく、数年も過ごせばそれは日本で暮らすのと変わらない「日常」に過ぎなくなる。けれど、その日常はすべてにおいて少しずつストレスを含んだ日常で、きっと若くてタフな人だったら(若いというのは10代とかそのへん)きっとすべてを吸収してパワフルに生きていくのだと思うけど、私の場合はもう疲れのほうが勝ってしまっていた。

ああ、疲れていたんだ、私・・・こんな風に、もう何もしなくても、そのままで僕は美樹ちゃんを好きだよ、と言ってくれる人を、本当は心から必要としていたのかもしれない。日本を出てからずっと、ずっとただ頑張っていて、誰に何を証明したいのかわからないままに、頑張らなければだめだと毎日自分を奮い立たせていた・・・それで彼氏に初めて抱きしめられたときに思った。もういい加減疲れたよ!このまま、ここでしばらく休みたい・・・・

風邪がうつるから!って言っているのに、彼氏は抱き合った体勢のままで眠りたがる。そうだ、元婚約者は腕枕で眠ることを一切しなかった・・・眠くなると「じゃあおやすみ」と言ってあおむけになって本格的な眠り体勢に入っていった。抱き合って眠ったりすると眠りが浅くなる。一泊だけの恋人同士の滞在ならいいけど、毎日、毎日続く結婚生活は日常そのものなのだから、元婚約者のように熟睡させてくれる眠り方の方が結婚に向いているのではないか?と考えるのが理屈。でも、好きな人には一晩中触れていたいよ、とさみしそうな顔で私に訴える彼氏を、どうしようもなく可愛いと思ってしまうのが私の感情。

それでもまだ、元婚約者のことが完全に自分のなかで納得したかたちになっているかというとそういうわけでもない。

もしかしたらやっぱり、彼氏とのことが一時的な気の迷いで、最後には元婚約者に戻っていくのかもしれない・・・なんてどこかで自分の気持ちの変化を待っている。もう何か月も。

元婚約者からは数日おきに連絡がある。でも電話の会話はもう、私たちの関係のことや将来のことではなくて、今元婚約者が夢中になっている自分のキャリアのスタートアップについて。

彼には自分の人生がある・・・自分の世界があって、自分の交流関係があって。彼のそんなところを尊敬していたし、好きだと思っていたし、私自身もそうありたいと思っていたのに・・・そのために本当は私は、ずっと寂しかったんだろうか?

一日の終わり、仕事が終了して帰宅すると私は一番に日本に国際電話をする。私は仕事で疲れてちょっとハイパーになっていて、彼氏は眠そうな、でも幸せな声で「美樹ちゃん、おはようーー」と電話に出る・・・、

私はこのままどうなっていくのかしら。どうすればいいの?

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